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下のブツ、梅雨前くらいからポチポチやりだして、最初の部分はそう変わってないんだが
そこから下の部分は4,5パターンあって、更にその派生があったりとかで収拾つかなくなってきたからいい加減載せる
最初は松寿丸設定で、兄がいたはず
というかその設定で4パターンくらいあって、結局面倒になって例外のこれに落ちついた
毛利のお話
とりあえず私は、毛利に夢を見すぎなんだと思いました。
ひんやりと薄暗い物置のなか、膝を抱えてうずくまっていた
ぼんやりと視線をやれば、格子窓から幾筋もの日が射し込んでいるのが見える。
その通り道には埃が舞っていて、思い出したように軽く咳をしてみた。
師走の時にしか掃除もしないような物置だ。こんな場所に好んで来るのは自分くらいだろう。
幼い頃から、何かあると決まってこの物置に来ていた。
ここは、唯一の逃げ場だったのだ。
(しかも大抵、目を真っ赤にして駆け込んでいた気がするな)
そんな昔の自分を思い自嘲めいた笑みを浮かべると、顔をあげて光に手をかざす。
かざしたさきにみえる光はとても眩しくて、透かした手のひらはとても赤くて、思わず眉をひそめた。
(赤い…)
薄く、白い皮膚の下に赤い血液が流れているのが見える。
刀をすべらせれば生を主張するかのように勢いよく吹き出す血潮。
目を閉じて額に手の甲を当ててみれば、ドクン、ドクンと脈打つ音が聞こえた。
(生きている…)
血も涙もない氷のような人間と言われようとも、自分にも確かに人と同じものが流れているのだと少し安心した。
少し疲れた。
時々、だれもいない場所が恋しくなる。
室も家臣もいないようなところでひたすらうずくまるのだ。その行為自体に意味はない。
ただ、ただ一人になりたい時があるだけで。
たぶん自分を守りたいのだろう。特に何からと言うわけではなく、何からも。
でも、そうやって己を守るようにうずくまっていても、胸の内に生まれる言葉にならないぽっかりとした感覚からは逃れられず少し、やるせない気持ちになる。
自分は恵まれている。
小さいといえ大名の子に生まれ、食べるに困ったことはない。
農民の様に田畑を耕し稲を植えぬ代わり、父の跡を継ぐべく様々な事を学んだ。
だが、知識を得るのは楽しかったし、部屋に篭り書物を捲るのは何より性にあっていた。
自分は恵まれている。
それはわかっているのだ。
それなのにやるせないこの気持ちはなんなのだろう。
悲しい切ない泣きたくなる。それらに意味などないというのに。
ああ、遠くから毛利元就を呼ぶ声が聞こえる。
嫌だ、と思った。ここを出れば安芸のみならず中国総てを支配する毛利元就の面を被らねばならない。
息の詰まる冷酷無比なあの仮面を。
才覚はあった。自分の代で毛利家は安芸の国だけを治める小大名から中国地方を統治する大大名へと一気に繁栄の道を辿った。
だが、やはり自分には向いていなかったのだと、つくづくそう思う。
ならばなぜそんな仮面を被ったのかと問われれば、被らなくてはならなかったと答える。
下剋上が罷り通り、喰うか喰われるか戦乱の世の中で、家が、周りが只の毛利元就であることを許してくれなかったのだ。
いや、言い訳は止めよう。
状況云々を言うのは甘えだ。遅かれ早かれこの家に産まれたならばやらねばならぬことだったから。
どんな過程を経ようとも、面を被ることを選択したのは自分なのだ。
自分を呼ぶ声がさっきより近づいてきた。
ギュッと拳を握り物置を見渡す。
射し込む陽はさっきよりも橙を帯びている。陽の上にはやはり埃が漂っていて、幼い頃から何一つ変わっていない光景。
慣れ親しんだ、ひんやりと薄暗く居心地のよい物置。
(逃げてばかりもいられぬか)
一つ、息を吸った。
「騒々しいぞ。我はここに居る」
また逃げ込むことはあるだろう。
でも、ここは変わらずに受け入れてくれる。今はそれで十分だと思った。
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