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今日七夕やん
雨が降らないって珍しい
月がすごく明るいっす
テスト勉強してないっす
言葉は要らない
遠くから砲弾の破裂する音が聞こえる。それに混じって人の叫び声もした。
だが、この場には誰もいない。圧迫感というのか、ジリジリと肌を焼くような奇妙な静けさだけが場を支配している。
ここ厳島の、見上げるばかりに高い門を越えて飛び込んできた奴と、お互いの得物を構えて睨み合うこと数瞬、やつが口を開いた。
「あんたとも長い付き合いになるな、毛利。相変わらず仮面被って人を拒絶して、それじゃあアンタが寂しいだけだって言ってるだろ。いい加減わかってくれよ」
相も変わらず心底どうでもいい、大きなお世話だった。
最初に「知ったような口を聞くな」と切り捨てたのだが、顔を会わせるたびにこの台詞を言ってくる。
その度心の中で思っている。
自分は幼少の頃よりこんな風に生きてきたし、この生き方しか知らないのだ、と。
大体なぜこいつは我にそんなことを言ってくるのか。
赤の他人にこんな台詞を掛けられるこやつはきっと、愛されて育ったのだろう。
昔は姫若子と呼ばれていたらしいが、姫であることを許された環境で育ったということを想像するのはたやすい。
そして今は家臣に慕われ、雑兵に慕われ、己もそれらを慈しみ、愛す。
我とて二十年以上生きてきて、学問も兵法もそれなりにこなしてきた。
だが未だに愛という言葉だけはわからなかったし理解できない。
無償で人を思う気持ちとは、何なのだろう。
ああ、敵と向かい合っている時にこんなことを考えるなんて柄ではない。だから嫌なのだ。長曾我部と戦をするのは。
あの変な掛け声も聞いているだけで苛々するし、本人と顔を会わせれば人の心を掻き乱すようなことばかり言ってくる。
瀬戸の海を賭けて何度も戦をしたが、会えば会うほどこやつの顔が、言葉が、嫌になって嫌いになっていく。
殺しはしたいが顔は見たくなくて、絶対に自分の所へは来られないようにと策を施してみたりもした。
けれど、思いも寄らぬところからそれを突き破って、必ず我の眼前に辿り着いてきた。
そうして今もこうやって、ふたりきりで睨み合っている。
だが、このにらみ合いもじきに終わりそうだ。
閉じた門の向こうから、こやつの部下の声が聞こえてくる。
「アニキー!ご無事ですかー!?」
「馬鹿いってんじゃねぇ!アニキが負けるわけねぇだろ!」
「アニキ!すぐにこの門ぶち破ってそっちに行きますからね!」
我の駒共は役を果たせなかったらしい。
本当に苛々する軍だ。
二度とこいつらと戦などしたくない。
本当に、苛々する。
長かった対立に終止符を打とう。
子など成していないから毛利の家はきっと絶えてしまうだろうが、それはそれで良い気がする。
そうして最後の言葉を吐き捨て、目の前の男向かって輪刀を振りかぶった。
「虫唾が走る」
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